人を見て法を説く、と言います。それぞれの人に、それぞれの状況でどのような対応をしたら良いのかということに苦慮している管理職は多いと思います。
どんな「意識」で、どんな「言動」を取ったために、どんな「結果」を創っているか、という3段階で考えてみましょう。まず「意識・思い」ですが、目的意識を失い、意欲が低下している部下に対して、強くチャレンジする上司がいます。「何やっているんだ!頑張らなきゃダメじゃないか。」というように。意識面でずれてしまった部下にとって叱咤激励は逆効果になることが多いのではないでしょうか。むしろカウンセリング・モードの方が効果的です。上司は批判的にならずに、部下のありのままを受容し、どんな体験をしているのかに耳を傾ける姿勢を示すことが大切です。ありのままの体験を受け入れてもらうと部下はストレスから解放され始め、そして徐々に意欲を回復し目的意識を持つ方向へと動いていきます。
「意識・思い」がしっかりしている部下の場合には、その「言動」に焦点を当てます。
意識面がしっかりしていながら、行動に移していない部下がいます。この部下には行動するように挑戦し、要求します。また、行動はしていても成果に結びついていない部下もいます。この場合は、一生懸命であっても効果的な言動を選択していないということですから、行動の選択肢つまり他のやり方を考えさせたり、アドバイスしたり、ときには指示を与えることになります。
そして行動していて、なおかつ成果を創っている部下がいます。つまり効果的な言動を選択し、望ましい変化や結果を創っている部下です。この部下には承認を与え、さらに視野を広げて、後輩やチームの勝利のために貢献を促したり、達成可能な高い目標(ストレッチ目標)を協議して決めたりします。望ましい「変化・結果」を創っているということは、効果的な言動を選択している可能性が高いわけですから、部下にとっての次のステップに誘うと良いでしょう。
動機づけに関して「アメとムチ」という言葉が出てきますが、英語にも「キャロット&スティック」というよく似た表現があります。ニンジンと棒です。「ニンジンと棒は馬やロバを動かすには有効でしょう。部下をニンジンと棒で動かすことは出来ますが、馬やロバのような仕事をするにとどまることでしょう。」とジョン・ホイットモアというコーチが言っています。人を動かす、と言いますが、誰かからコントロールされるのが好きだという人はいないでしょう。人は自分で動きたいのです。ですから少し厳密に言えば、上司は「部下が自ら動くように影響を与える」のです。
対象者に影響を与える言動であるという意味で、コーチングはまさにリーダーシップの機能です。上司がコーチングを行う場合、自分自身を影響力のある存在だと認識する必要があります。あなたが優れたリーダーだとしたら、職場環境に対してさらに肯定的な影響を与えるために、新たにどんなことに取り組んだら良いと思いますか?