今回は3つの基本思考法をベースにどのようなツールや手順を使って、課題設定および解決策作成に導くかということを中心にお話したいと思います。
課題と解決策を探求するためにはそれらを構造化する必要があります。
ツールとしては、マトリックスによる構造化とツリーによる構造化があります。まずはマトリックスによる構造化の代表的なものを挙げておきましょう。
それはSWOT分析です。
SWOT分析は強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4要素に分けて自社あるいは自部門を分析するものですが、4要素を組み合わせてはじめてマトリックスになります。
強みと機会を組み合わせて「自社の強みを使って取り込みことができる事業機会は何か?」
弱みと機会を組み合わせて「自社の弱みによって事業機会を逃さないためには何か必要か?」
強みと脅威を組み合わせて「自社の強みを使って回避可能な市場の脅威(変化)は何か?」
弱みと脅威を組み合わせて「自社の弱みと市場の脅威が重なることで最悪の事態を招かないようにするためには何が必要か?」
以上の4つの相関関係を明らかにするのです。
SWOT分析は今や一般的なツールですが、しっかりしたディスカッションと情報提供が可能ならば社員の能力開発にはとても有効です。このようなマトリックス化によって、各要素が相互の関係性の中で意味を持ってくると同時に課題解決の方策や戦略が視覚的に整理されてきます。
さてもうひとつ、ツリーによる構造化ですが、クリスマスツリーを横に倒したようにひとつのテーマが後に行くほど具体的な表現となって広がっていく形になります。
「このテーマは具体的にはどのようにしたら実現するのか?」という質問によって掘り下げていきます。
そして通常は大きな要素(テーマ)を小さな要素に分解していくプロセスになります。この作業によって、課題が具体的アプローチへとブレイクダウンされ、解決策が生まれてきます。 このやり方を課題ツリーと言います。
変則的ですが、小さな要素を数多く出してからそれらの共通点が何かを考えていく作業も課題設定には有効です。
はじめに広げておいて、そこから集約していくというやり方です。
私自身は小さな要素である現象(企業の中に起きている様々な出来事)を出来るだけ多く抽出した上で、その現象を起こしている原因の原因、つまり真因が何かを探求するときに、このチャンクアップ方式を使います。チャンクアップとは、ひとかたまりの情報(チャンク)が何の役に立っているのか、どこから来ているのかを探っていくやり方です。
真因探求ツリーとでも言えるでしょうか。
この作業のプロセスの概略をお伝えしましょう。
最初に企業の現状から見た事実の把握から入ります。 成長要因、組織体制、人材、環境変化、主力市場など多くの角度から事実を見ていきます。
次に把握した事実のカテゴリー毎に重要なポイントへの絞込みをします。
そこからさらに現状を作り出している重要なポイントをカテゴリー横断的に把握する作業に入ります。ここまで来ると、ディスカッションに参加している社員たちは「目から鱗」という体験をし始めます。参加者たちはここで対策に入りがちですが、対処療法を戒め、さらにもう一歩探求します。
企業あるいは自部門の現状を作り出している本質は何かです。 ここに至ると組織的なブレイクスルーポイントが自ずと見えてきます。 組織的なブレイクスルーポイントを明らかにすると、その後は通常の課題ツリーで実行計画までブレイクダウンすることになります。
このとき参加者は個別の実行計画の担当責任者になりますが、上から押し付けられた課題とは異なり、自ら参画して決定した内容なので所有意識が高くなりその結果、遂行度も高まるのです。
これらを運営するに当たってひとつだけ問題があります。
それは有能なファシリテーターあるいはチームコーチが存在しないと良い結果を出すことが困難であるということです。普通に運営すればそれなりの結果は出ますが、現場で実践に移せるような質の高い内容に導くことは決して簡単ではありません。
内容が実践経営そのものなので、ここでの結論を実行計画として現場に持っていきたいものです。そういう意味では真剣勝負の研修といえるでしょう。