ビジネスで成果を上げる コーチングスキルアップ CCJ

コーチングコラム

コーチへのヒント「知覚のマジック」

第6回 影響力のスイッチ

自分には影響力がない?

「自分には影響力なんてないのだから隠れていよう。何かをしてもしなくても自分の影響力はたいしたことはないから責任はない」と思っている人がいます。そういう人物が周りからどれほど奪っているかを本人は自覚していません。人は存在する限り、周りに何らかの影響を及ぼしています。残念なことに良い影響ばかりではありません。ここでは単純に、プラスの影響とマイナスの影響とに分けてみましょう。

プラスの影響を与える人の特徴ですが、基本的に責任者の立場からものごとを捉えます。そして愛と勇気に基づく感情を抱いています。この人が行動するときは望ましい状態や成果を創り出すためです。この人はプラスの影響力を持った人々と仲間になっていきます。むしろプラスの影響力を持った人々を生みだすことに喜びを感じています。

マイナスの影響を与える人は基本的に被害者の立場でものごとを捉えます。この人は怖れと疑いを抱いて生きています。その行動は自分の正しさを証明するためであり、これ以上失敗しないために冒険を回避することであり、できない理由を探すためです。この人は自分と同じように変化しなくても良い理由を握りしめている仲間を作ろうとする傾向があります。極端にマイナスの影響を及ぼす人は様々なやり方で人々の同情や心配や恐怖という形の注目を引きつけますし、自分と異なる反応をする人々に対してときには攻撃的になり、誰かを悪者に仕立て上げ、自己正当化に汲々とし、自分がいかに優秀であるかを他の人を蔑むことで証明しようとし、自分の過剰な競争心から本来ならば戦わなくても良い人々とわざわざ対立して、無駄なエネルギーを燃やしているのです。こういう人物が集団の中にいるとなかなかチームワークは深まりません。本人は一生懸命やっているつもりでも周りはうんざりしているのです。
自分がこういう人物と希薄な関係ならば、「敬して遠ざける」という戦略でやり過ごせばよいのですが、身近な存在であったり、同じ職場であったり、プロジェクトのメンバーであったりすると面倒くさい相手となります。まさに面倒を見てあげなければいけない存在になります。こうして周りからエネルギーや気力を奪っていくのです。

このように書くと、このような人は破壊的な意図を持って生きている人物であるような印象を持たれるかもしれません。しかし実際には奪ってやろうという破壊的意図を持って人間関係を作る人はいないと思ってよいでしょう。人は誰でも価値ある存在です。でも心の中で思っていることや実際の言動は問題になるかも知れません。周りの人々にとって大問題でも、当の本人はそれで精いっぱいであり、それ以外の選択肢があるとは思っていません。

プラスとマイナスの影響力の本質的な違いは?

どんな人でもプラスの影響力を発揮しているときとマイナスの影響力を発揮しているときがあります。ですから人の影響力はプラス面とマイナス面との間を揺れ動いているのです。人はどちらにもなるのです。

では両者を分ける本質的な違いは何でしょうか。
それは視点の違いです。プラスの影響を及ぼしている人は心の目が外側に向いています。外側とは他の人々であり、社会のことです。
それに対してマイナスの影響を及ぼしている人の心の目は内側に向いています。ここでいう内側とは自分の記憶のことです。未完了のままにしている過去の失敗体験に心が囚われているとき、「やっぱり自分は駄目だ」と心の中で囁き、自分の中に不足感や不十分感を創り出しています。するとその不十分感を埋めるために無意識的に誰かからの承認や注目を求めてしまいます。他の人からの肯定的なストロークを諦めた人は、他の人から自分に対する否定的なストロークを引き出してしまいます。たとえ否定的なストロークであっても注目されていることには変わりありませんから。
こういう人は自分の過去の失敗体験や痛みの記憶と自分の不十分感を因果関係にしているのです。自分の過去の経験をどのように記憶しているかが現在の自分の不十分感を創り出し、それが周りからエネルギーを奪う言動につながり、そのためにさらに自己嫌悪に陥るという悪習慣になっているのです。そうしてますます自己イメージが矮小化されて仮面と鎧で本当の姿を隠して生きていくことになります。この生き方では結果的に自分の不十分さの証拠集めをしていることになりますから、まさに悪循環に陥っているといってよいでしょう。

どちらの影響力を発揮するかを選ぶことができるとしたら?

自分の過去を振り返ったときに「あれは痛い体験だった」という記憶が全くない人はそれほど多くはありません。過去に痛い体験をした人は誰でも他の人にマイナスの影響を及ぼすのでしょうか。そんなことはありません。失敗体験を持った人でも周りにプラスの影響力を発揮している人はいくらでもいます。ではプラスの影響を与えている人とマイナスの影響力で他の人々から奪っている人との決定的な違いは何でしょうか。
それは自分の影響力のスイッチをプラスの側のONにしているということです。

人間には影響力のスイッチがあります。つまりプラスとマイナスの影響力のどちらを発揮するかは選択できるのです。そのヒントはすでに述べた「視点の違い」にあります。
中国の歴史に登場する北宋の思想家、程明道の言葉をご紹介します。

    一心以(も)って邦(くに)を喪(うしな)うべく、
    一心以って邦を興(おこ)すべし。
    ただ公私の間に在るのみ
    『近思録』より

「心の持ち方ひとつで、国を滅ぼすこともあれば、国を興すこともある。心が「公」に向いているのか「私」に向いているのか、それが分岐点である」という意味です。
プラスの影響を与えるために、自分の中の未完了の出来事を完了する作業が効果的なのはもちろんですが、心の目を外に、公のことに向ける習慣を身につけましょう。自分はどのような価値を現実化したいのか、どのような環境を作りたいのか、どのような目覚ましい成果を作りたいのか、本当はどれほど豊かな人間関係を築きたいのかに心の目を向けましょう。そして、その実現のために少しだけ勇気を出して冒険しましょう。

我が国は未曽有の国難を迎えています。このようなとき、多くの国民が当てにならないリーダーの退場と優れたリーダーの登場を待望することは理解できます。でも、最初にあなたが無名のリーダーとして立ち上がる選択をしましょう。そして無名のリーダーのネットワーキングを始めましょう。あなたの身の回りから。
リーダーとは、自分の周りに肯定的な影響を与える人のことです。さあ、始めましょう。

2011年7月12日


次ページ: 第7回 綺麗(きれい)ごとに本気

ページの先頭へ

コーチングコラム

新刊紹介

『ロバート・ディルツ博士の
天才達のNLP戦略』
表紙画像: 天才達のNLP戦略
紹介ページへ

Copyright(C) 2005 Co-CREATE JAPAN Inc. All rights reserved